小沢一郎と平清盛シリーズ暫定六巻　小池百合子と建礼門院徳子(Kobo/電子書)

2016年7月の東京都知事選の当選でブレイクして一躍「時の人」となった小池百合子氏は、自身の地域政党「都民ファーストの会」が2017年7月の東京都議会選で圧勝したことで中央政界さえも震撼させたため、マスコミも連日小池氏の動向を報道したことで生じたフィーバーぶりは「小池劇場」とも呼ばれたものです。
そして2017年9月に安倍晋三首相が決断した解散総選挙に対して小池氏は真っ向勝負を挑み、国政政党「希望の党」を結党して都知事兼任のまま代表の座に就くと、全国各地の選挙区で候補者を擁立したため、当初は安倍首相をはじめとする政権中枢にも相当な危機感を抱かせたと言えます。
ところが、衆院解散直後にあった「民進党との合流を巡る混乱」によってその勢いが急激に失速したため、10月22日投開票の総選挙では「50議席しか確保できない惨敗に終わり、小池氏も知事職に専念するために11月14日に代表辞任するという展開になります。
東京都議会選後の７月から８月にかけて日本中を席巻していた小池フィーバーによる熱気が、10月の総選挙の惨敗によって見る影もなくなってしまったため、希望の党だけでなく小池氏に対する国民の支持や評価も下がり続けている状況と言えます。

こうした「急激な栄枯盛衰ぶり」に対し、世間では小池氏に対する容赦のない批判やバッシングが繰り広げられているところがあり（2017年12月段階）、「完全に人気が地に堕ちた」「どんどん人心が離れる」「希望の星、改革の旗手が一転、リベラル派を排除する詐欺師に豹変」「小池劇場が日本を滅ぼす」等のメディアの論評だけでなく、国民からも「小池さんにはガッカリした」とか「期待したのに裏切られた」とか「なんでもほっぽり出す」とか「何にもしない出来ない、裸の女王だった」とか「最近の栄枯盛衰は速度が早い早い」とか「賞味期限短すぎ。一発屋芸人でも一年持つぞ」というような辛辣な声が続出するようになったと言えます。
こうした状況に対し、個人的には小池氏という人物に対する印象は「世間の印象とはまったく逆」のところがありまして、2016年の都知事選当選以降の「世間で持ち上げられている時」はほとんど関心が持てずにずっと冷ややかな目で見ていたのですが、総選挙惨敗に関するこの人の言動を見ていく中で印象が変わって「この人面白い！」という気持ちになれただけでなく、小池氏に対して「まだ挽回のチャンスはあるから、捲土重来を期して頑張ってもらいたいものだ」とエールを送りたい気持ちにさえなったところがあります。
世間に出ている「もうちょっと策士かと思ったけど、その薄っぺらさに驚くというか、呆れています」というような小池批判を聞きますと「ひょっとしたら、総選挙惨敗後にこの人を評価するようになったのは自分だけかも……」という気持ちになることもあるのですが、なぜ私が「一転して小池氏を評価する（少なくとも関心を持つ）」ようになったのかと言いますと、９月の希望の党結党と民進党合流の判断、そして10月の総選挙惨敗に関するこの人の言動を見ていく中で「ひょっとしたら、この人も平家一門に関係しているんじゃないか？」という思いになったことにあります。

私は2011年から12年にかけてこの「小沢一郎と平清盛シリーズ」の構想として「小沢氏に近い（あるいは敵対する）政治家と平安末期の人物の比較論」をやっており、現代の様々な政治家を検証していたのですが、その際にこの小池百合子という人物についてはまったく意識することなく、「完全ノーマーク状態」だったものです。
ところが、2017年10月になって「ひょっとしたらこの人も平家一門に関係するのでは」という思いになって検証してみたところ、すぐに「平家一門の中でもかなり重要なある女性に、相当なところまで重なる」という手応えが得られたため、その時点で「これは小池氏を小沢一郎と平清盛シリーズに入れる（それを自分で書く）しかない！」という思いになれたところがあります。
世間では「小池さんが何をやりたいかわからない」とか「迷走っぷりが半端ではない」という声も聞きますが、個人的には「この人と重なる平家一門の女性が見えた」ことで「この人の深層心理や本当にやりたいことが見えてきた」という感触が得られたところがあり、「ひょっとしたら、総選挙での惨敗もこの人の想定の範囲内だったんじゃないか……」という思いにさえなったところがあります。
この『小池百合子と建礼門院徳子』で書いた話をどう受け止められるかは読まれた方の自由ですが、「小池さんにはガッカリした」という思いになっている方であっても「この見方は面白い」とか「それなら自分も今後の小池さんに期待してみよう」という気持ちになってもらえるのではないか、と思っています。「本物の小池劇場」を堪能してもらえれば幸いです。

※「小沢一郎と平清盛シリーズ」シリーズ構成（2018年3月時点）
第一巻『小沢一郎と平清盛』
暫定二巻『松木謙公と平重衡』
暫定三巻『原口一博と平宗盛』
暫定四巻『細野豪志と平維盛』
暫定五巻『前原誠司と平重盛』
暫定六巻『小池百合子と建礼門院徳子』
暫定七巻『小泉純一郎と源義朝』
暫定八巻『渡邉恒雄と後白河法皇』

・以下、細川護煕、野田佳彦、橋下徹、石川知裕、馬淵澄夫、枝野幸男と「彼らに類似する平安末期の政治家」を論じた続編の刊行も考えています。

＊目次抜粋
まえがき ～「迷走した」と言われる2017年総選挙での小池氏の判断に対し、この人と重なる平家一門の女性を分析すれば「この人が何をやりたかったのか」が見えてくる
1 「小池劇場」が日本中を席巻していた頃はまるで関心が持てず、「すぐブームは終わるだろう」という冷ややかな目で見ていた
2 世間に出ていた「男をその都度使い切る女帝のよう」という論評と総選挙後の「鉄の天井発言」で、一時は「正体見たり」とさえ思った
4 「安徳天皇の母」として有名な建礼門院徳子の魅力は「女性でありながら修羅場をくぐって最後まで生き抜いたサバイバル力」にある
8 小池氏は「郵政選挙や都知事選」など、何度もリスクを覚悟して背水の陣を敷きながら勝ってきたため、相当なサバイバル力を持った人物と言える
12 「全員受け入れか排除か」の選択に対し、仮に小池氏が「後者を選んだら国民の支持が離れる」ことがわかっていてもこの選択しかなかった
15 小池氏は「排除発言」で「安全保障と憲法観が一致しない議員の寄せ集めで、政党を運命共同体と考えている民進党」に引導を渡した
18 細野氏は希望の党立ち上げに尽力しただけでなく、設立メンバー内で実績が突出していたにもかかわらず、冷遇されていた雰囲気がある
20 徳子は都落ち後の絶望的な状況の中、敵に対する憎しみ以上に「平家一門の男たちの情けなさ」が歯がゆくて仕方がなかった
23 この人の失敗が「人間らしい」ことは間違いなく、「自分は完璧な人生を生きてきた」と言える人でない限り、この人を悪く言う資格はない

その結果、この発言がきっかけとなって小池氏や希望の党への支持が失速することになりますが、繰り返しますが個人的には「仮にこの時の小池氏が「選別することで、権力をふるっている感が出て国民の支持が離れてしまう」という結果がわかっていた場合でも、全員受け入れるという選択はできなかった」という感じがしてしまいます。
なぜなら「それをやったらそれまで培ってきた自分の政治信念を曲げることになり、それまで政治家としてやってきたことを自分自身で否定することになる」からです。私はここに気づいた時に「どうやらこの人は、とことん筋を通さないと気が済まない人なんだな」という思いになれたところがあり、「筋を通したことで大一番で惨敗し、それによって猛烈なバッシングを浴びせられている現状を考えると、こういう人は応援したくなるなあ……」と思ってしまう、ということです。
～「15 小池氏は「排除発言」で「安全保障と憲法観が一致しない議員の寄せ集めで、政党を運命共同体と考えている民進党」に引導を渡した」より

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